医療機関の情報セキュリティ

医療機関に情報セキュリティが必要な背景、その必要性

情報技術の進展に伴い「情報」が個人や組織が活動するための貴重なものとなり、安全に管理する事の重要性が益々高まっています。  情報がコンピュータで取り扱われるものだけではなく紙ベースや会話などいろいろな形で扱われています。これらの情報を安全に管理する事は、医療機関に限ったことではなく社会的な責務となっています。  個人情報保護と安全性確保は、全ての個人、企業、研究機関、政府において重要ですが、医療分野でのセキュリティ要件(機密性、完全性、可用性)は特に高い分野です。なぜなら医療機関は、医療提供の必要性から個人的情報(家系や宗教、思想信条など)に触れることもありえますので、個人医療情報は全ての個人情報の中でもっとも機密性があると見なされており、その機密性を保護することは患者のプライバシーを守る為には基本的なことです。

この管理を怠った場合、その被害は自らに及ぶのみならず、他者にも及ぶことが考えられます。 個人の医療情報漏洩の事件はその一例です。  多数の関係者が情報に関与する医療機関で、安全な情報セキュリティ管理をするためには、組織として行う必要があります。  例えば医療情報の完全性を確保するために、その情報の取得から保存、更新、提供、廃棄までの完全なライフサイクル管理が行われなければなりません。完全性の確保のみならず、医療情報の可用性の確保も、効果的な医療提供のためには必要になってきます。  セキュリティ管理に重きを置き過ぎる余り、医療行為に支障が出るような事態となっては本末転倒です。 医療情報システムはまた、 自然災害やシステム故障時に当たっても運用性が確保されることが必要不可欠な要請となっています。  したがって、 医療情報の機密性、 完全性、 とりわけ可用性を保持することは、 医療分野では大きな特徴と言えます。

医療分野で情報セキュリティマネジメントが必要な要因のひとつに、 医療提供においてインターネット技術や無線通信などの技術が、どんどん使われてきていることの現実があります。  これらの技術は適切に扱われないと医療情報の機密性、完全性、可用性のアンバランス、危険な状態を増やします。  医療行為は、大学病院もあれば、個人経営の診療所あるいは小規模診療所で提供される場合もあります。小規模診療所ではセキュリティを管理するための体制が不十分になりがちです。医療施設の規模、場所、医療提供形態に関係なく、全ての医療機関は医療情報の保護のために厳重な管理をしなければなりません。  従って、 医療機関は組織的に情報セキュリティマネジメントシステムを構築し、必要な管理策の選択と実装が急務となっています。

医療機関の関係者

医療機関には多数の関係者が存在します。資格で区分すると、医師、歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、看護師、などが挙げられます。「JIS Q 9000:2000」の定義を医療機関に当てはめると、「組織」とは各種形態の医療機関、上記の資格者、その他の医療機関で働く人々と言えます。「顧客」とは言うまでも無く患者、患者団体および家族です。「供給者」とは、 医療機関への物品、サービスの提供業者です。「利害関係者」とは前記全ての他に、医療機関の設立組織、保険者、薬局、資格者の団体が含まれます。これら関係者の情報への関与の仕方を明確にする事が重要となります。

医療情報の形態

医療情報は様々な形態で存在します。 言語や数字で表現されたものだけでなく、 写真、図、ビデオ、医療画像の形態をとるものもあります。また保管形態も、紙、フィルムや電子的媒体があります。また、伝送する方法には、手渡し、FAX、郵便、コンピュータネットワーク等が利用されます。医療情報がどんな形態を取り、どんな媒体、手段で転送や保管されたとしても、適切に保護されなければなりません。

取扱いする医療情報の把握

情報システムで扱う医療情報をすべてリストアップし、安全管理上の重要度に応じて分類を行い、常に最新の状態を維持する必要があります。このリストは情報システムの安全管理者が必要に応じて速やかに確認できる状態で管理されなければなりません。  安全管理上の重要度は、安全性が損なわれた場合の影響の大きさに応じて決めます。少なくとも患者等の視点からの影響の大きさと、継続した業務を行う視点からの影響の大きさを考慮する必要があります。この他に医療機関等の経営上の視点や、人事管理上の視点等の必要な視点を加えて重要度を分類します。  個人識別可能な医療に係る情報の安全性に問題が生じた場合、患者等にきわめて深刻な影響を与える可能性があり、医療に係る情報は最も重要度の高い情報として分類されます。

医療機関における情報セキュリティのリスク分析

分類された情報毎に、管理上の過誤、機器の故障、外部からの侵入、利用者の悪意、利用者の過誤などによる脅威を列挙します。医療機関等では一般に他の職員等への信頼を元に業務を進めているために、同僚等の悪意や過誤を想定することに抵抗があります。  しかし、情報の安全管理を達成して説明責任を果たすためには、たとえ起こりえる可能性は低くても、万が一に備えて対策を準備する必要があります。 また説明責任を果たすためには、これらのリスク分析の結果は文書化して管理する必要があります。  この分析の結果、得られた脅威に対して、リスク値に応じてリスク対応方針にそった管理策を適用し対策を実施していきます。  特に安全管理や、個人情報保護法で原則禁止されている目的外利用の防止はシステム機能だけでは決して達成できないことに留意しなければなりません。システムとして可能なことは、人が正しく操作すれば誰が操作したかを明確に記録しつつ安全に稼動することを保障することであり、これが限界です。従って、人の行為も含めた脅威を想定し、運用管理規程を含めた対策を講じることが重要です。  医療情報システムとして上記の観点で留意すべき点は、システムに格納されている電子データに関してだけでなく、入出力の際に露見等の脅威にさらされる恐れのある個人情報を保護するための方策を考える必要があります。  以下にさまざまな状況で想定される脅威を列挙します。

1.医療情報システムに格納されている電子データ (不正アクセス、改ざん、き損、滅失、漏えい など)
2.入力の際に用いたメモ・原稿・検査データ等 (メモ・原稿・検査データ等の覗き見、持ち出し、コピー、不適切な廃棄 など)
3.個人情報等のデータを格納したノートパソコン等の情報端末 (持ち出し、不正アクセス、改ざん、き損、滅失、漏えい など)
4.データを格納した可搬媒体等 (持ち出し、コピー、不適切な廃棄、盗難、紛失 など)
5.参照表示した端末画面等 (覗き見 など)
6.データを印刷した紙やフィルム等 (覗き見、持ち出し、コピー、不適切な廃棄 など)
7.医療情報システム自身(IT障害、不正侵入、改ざん、不正コマンド実行、情報かく乱、ウイルス感染、サービス不能 など)
8.非意図的要因による IT障害 (システムの仕様やプログラム上の欠陥(バグ)、操作ミス、故障、情報漏えい など)
9.地震、水害、落雷、火災などの災害による IT障害(電力供給の途絶、通信の途絶、コンピュータ施設の損壊等、IT機能不全 など)
これらの脅威に対し、適切な管理策を実施することにより、発生の可能性を低減し、リスクを実際上、問題のないレベルにまで小さくすることが必要になります。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

近年の医療の情報化の進展に伴い、個人自らが医療情報を閲覧・収集・提示することによって、自らの健康増進へ役立てることが期待されています。これを受けて医療情報ネットワーク基盤検討会が、各所より医療情報に関するガイドラインの整合を図る検討しまとめたものが、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」です。

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、病院、診療所、薬局、助産所等(以下「医療機関等」という。)における診療録等の電子保存に係る責任者を対象とし、理解のしやすさを考慮して、現状で選択可能な技術にも具体的に言及しています。ガイドラインは技術的な記載の陳腐化を避けるために定期的に内容を見直しすることになっています。現在、改訂を重ね第4版が最新版となっています。

このガイドラインは「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」と対になるもので、個人情報保護は情報システムに関わる対策だけで達成されません。従って、本ガイドラインを使用する場合、情報システムだけの担当者であっても、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」を十分理解し、情報システムにかかわらない部分でも個人情報保護に関する対策が達成されていることを確認することが必要であるとされています。

このガイドラインの6章では、 「6.1 方針の制定と公表」において JIS Q 15001:2006 の引用によって公表すべき基本方針の項目を明示し、JIS Q 27001:2006 の引用によって安全管理方針を具体的に説明した上で「C 最低限のガイドライン」を新設されています。同様に、 「6.2 医療機関における情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の実践」においても「C 最低限のガイドライン」及び「D 推奨されるガイドライン」を新設しています。 「6.11 外部と個人情報を含む医療情報を交換する場合の安全管理」においては、B 項及び D 項に従業者による外部からのアクセスに関する事項を追加しています。

医療機関における情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の実践

医療情報を取り扱う事業者は、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に沿って、医療機関における情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の実践が求められています。その実現手段としてISO27001認証取得をすることは、体系的なマネジメントシステムを短期間に合理的に構築するという面で非常に有効です。 ISMSの構築は PDCA モデルによって行われます。 JIS Q27001:2006 では PDCA の各ステップは下記のように規定しておりますので、合理的に構築を進めることができます。
・P では ISMS 構築の骨格となる文書(基本方針、運用管理規程等)と文書化された ISMS構築手順を確立する。
・D では Pで準備した文書や手順を使って実際に ISMSを構築する。
・Cでは構築した ISMSが適切に運用されているか、監視と見直しを行う。
・Aでは改善すべき点が出た場合に是正処置や予防処置を検討し、ISMS を維持する。

上記のステップをより身近にイメージできるようにするために、医療行為における安全管理のステップがどのようにおこなわれているかについて JIPDEC(財団法人 日本情報処理開発協会)の「医療機関向け ISMS ユーザーズガイド」の例などを参照して進めていきます。

医療分野においては診察、診断、治療、看護等の手順が過去からの蓄積によってすでに確立されているため、あとは事故やミスを発見したときにその手順にそって分析していくことで、どこを改善すればよいかがおのずと判定できます。分析結果にもとづき必要な対策を実行することで、安全が高まる仕組みが出来上がっているためと言えます。 反面、情報セキュリティでは IT技術の目覚しい発展により、過去の経験の蓄積だけでは想定できない新たなセキュリティ上の問題点や弱点が常に存在し得ます。そのため情報セキュリティ独自の管理方法が必要であり、ISMSはそのために考え出されました。ISMSは医療の安全管理と同様 PDCA サイクルで構築し、維持して行きます。 逆に言えば、医療関係者にとって ISMS 構築は P のステップを適切に実践し、ISMS の骨格となる文書体系や手順等を確立すれば、あとは自然に ISMS が構築されていく土壌があると言えます。

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製造業における情報セキュリティマネジメントシステム

国際規格ISO27001:2005「情報技術-セキュリティ技術-情報セキュリティマネジメントシステム・要求事項」は、IT企業のみならず製造業や建築業、医療関係、その他サービス業など業種を問わず適用することができる。

ISMSを構築・運用しようとする製造業は、企業情報を適切に管理し、情報セキュリティを確保するための体系的なしくみ、コンピュータシステムのセキュリティ対策だけでなく、情報を扱う際の基本的な方針(セキュリティポリシー)や、それに基づいた具体的な計画、計画の実施・運用、一定期間ごとの方針・計画の見直しまで含めた、トータルなリスクマネジメント体系を構築し運用していくことになる。

製造業様向け情報セキュリティマネジメントシステムの必要性

  • 日本の製造業の各社は、国際競争力を確保するため海外への工場進出の推進、あるいは国内工場における外国人研修生を受入れ、協力会社との分業を行うなど、企業の競争力を左右する企業情報に携わる人が多岐にわたっている。こうした動きは、既に避けることが出来ないものとなっている。こうした状況の中で、超優良企業と呼ばれる自動車関連の企業製造業で、大きな機密情報の漏洩事件があったことは記憶に新しい。これは対岸の火事ではない。
  • 先端技術を扱う親会社は、下請け取引をする製造業に対しても大事な技術情報の漏洩などが発生しないように細心の管理を行うようになっている。そうした親企業との取引を継続していくには自社にもしっかりとした情報セキュリティマネジメントシステムを構築する必要がある。
  • 大手製造業は知的財産権の保護のため特許戦略などが重要になるが、その下請け中小製造業の場合、製造現場での製造方法や用いる原材料など、文字や文書になっていない現場作業の中に守るべき情報資産が隠れている。
  • ひとたび、先端技術情報の漏洩や情報ネットワークシステムに何か問題が発生し、事件・事故の発生となれば、企業の 事業継続性にも大きな影響が及ぶことを意味し、日常の工場稼働、事業存続にも大きな影響を受けることを意味 している。

認証取得までにPDCAサイクルを1回転させる

  • Plan-計画(ISMSの確立)
    • 全般的な基本方針及び目標に沿った結果を出すための、リスクマネジメント及び情報セキュリティの改善に関連する情報セキュリティ基本方針、目標、プロセス及び手順を確立する。顧客の機密情報、顧客情報、自社の技術的な機密情報を明確にする。
  • Do-実施(ISMSの導入及び運用)
    • 情報セキュリティ基本方針、管理策、プロセス及び手順を導入し、運用する。入退室管理、図面の管理などを見直し、従業員や協力会社との契約管理などさまざまな管理策を実施していく。
  • Check-点検(ISMSの監視及び見直し)
    • 情報セキュリティ基本方針、目標及び実際の経験に照らしてプロセスの実施状況を評価し、可能な場合これを測定し、その結果を見直しのために社長に報告する。
  • ACT-処置(ISMSの維持及び改善)
    • ISMSの継続的な改善を達成するために、内部監査及びマネジメントレビューの結果やその他関連情報に基づいて是正処置及び予防処置を講ずる。

ISMS付属書Aの詳細管理策とは

詳細管理策 は以下のようにA.5からA.15まで11の領域/分類(管理目的:39個、管理策:133個)がある。適用宣言書でこれらの詳細管理策を採用するか否かを明確に記述する。

   - A.5 セキュリティ基本方針情報セキュリティの重要性を伝達など
   - A.6 情報セキュリティのための組織契約関連の文言の見直しなど
   - A.7 資産の管理ラベル付けのルールを明確にするなど
   - A.8 人的資源のセキュリティ従業員の管理(雇用前、雇用中、雇用の終了時の処置)など
   - A.9 物理的及び環境的セキュリティ工場の入退室管理ルールの徹底など
   - A.10 通信及び運用管理webや電子メールのルールなど
   - A.11 アクセス制御機密情報へのアクセス管理など
   - A.12 情報システムの取得、開発及び保守生産管理システム、CAD/CAMなど
   - A.13 情報セキュリティインシデントの管理情報漏洩など発生時の対応手順の確立など
   - A.14 事業継続管理工場が天災や情報ネットワークの破壊で機能しなくなった場合の対応・復旧についてアセスメントするなど
   - A.15 コンプライアンスライセンス管理、特許関連及び輸出入関係のルールなど

これからシステム構築しようとする製造業の推進担当は、事前のチェックとして、次のチェックをしてみるとよいでしょう。

   - 物理的・環境的側面のチェック(出入口やパーティションなど)
   - オフィスセキュリティ面でのセキュリテイゾーンのチェック(オフィスレイアウト図)
   - ネットワーク環境のチェック(ネットワーク図)
   - 情報管理に関するコンプライアンス上のチェック(ソフトウェアライセンスなど)
   - 新規システム構築または更新の検討
   - 関連する過去のセキュリティ事件・事故
   - セキュリティ組織の編成

システム導入・運用

システム導入運用にあたり社員教育を実施する。初回構築時におけるPDCAの運用であるDoは、初めての取り組みとなるため、開始時は特に「試行」的な運用として、試行錯誤を繰り返しながらシステム運用を確立していくことになる。そのため、取得期限などを加味しながらも出来る限り長い期間を取って、定められた規則や手続きに従い、各人の役割を確かめながら進めていくことが肝要となる。 次にISO27001規格に基づき、運用状況を点検、評価する内部監査を実施する。内部監査において指摘された事項、日々の事件・事故報告、また情報セキュリティに関する利害関係者からの報告事項などをもとに是正処置及び予防処置を実施する。 内部監査結果などのインプット情報を収集してマネジメントレビューを実施する。

情報セキュリティマネジメントシステム実践のポイント

  1. 製造業の現場の知識・経験を持ち、かつISO27001の知識・経験、経営の知識・経験があるコンサルタントの採用。
  2. その組織にあったリスク評価を行い、現状に合った対策を実施する。
  3. 適切なリスク対策の策定と実践。
  4. 啓発・教育・訓練で、従業員意識の維持/向上を図る。
  5. すでにISO9001、ISO14001を導入済みの製造業様では統合マネジメントシステム(MS)の構築することを検討する。

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ソフトウェアのISO9001

ソフトウェアのISO9001 認証取得の状況

情報技術分野(ソフトウェア)でのISO9001の認証登録制度は、1996年2月から開始され、現在では、さまざまな分野で品質マネジメントシステムの構築、審査登録を行う企業が増加している。  この制度の開始当初は、大企業での取り組みがほとんどであったが、1990年代後半になると100人以下の企業での登録が目立つようになり、現在では数人から50人ほどの規模での登録事例が多くなっている。ISO9001の産業分野別の構成比率では「サービス業」が最も多くなっている。  最近のリーマンショック以後の経営環境は、派遣切りの影響でIT業界、ソフトウェア業界も大変革を求められている。これまでの経営状態を維持するだけではじり貧となってしまう状況になっている。ISO9001認証取得が新規の顧客獲得のツールとして見直されつつある。

ISO9001の規格は1987年に制定された初版で始まり、その後1994年の改訂を経て、2000年12月の改訂では、それ以前の版と比べて規格のコンセプト、構造、内容、用語など、非常に大きな変化があった。さらに2008年には追補版が発行された。2008年版は、2000年版と内容の変化がないものの、表現を分かり易くするなどの追補改訂が行われ、現在に至っている。  2008年版規格は、それ以前の規格に基づいて構築された品質マネジメントシステムで、「管理工数の増大、資料や記録の増大を伴う割に、品質改善が思ったように行われない」というような品質マネジメントシステムの効果を疑問視する声や、規格の意図を誤って解釈し、システム構築や運用が行われていたことの見直しや、さまざまな改善が図られ、この規格に基づく品質マネジメントシステムの構築、運用がよりよい効果をもたらすと期待されている。

ソフトウェアのISO9001 品質マネジメントシステム構築の課題

ソフトウェア分野でISO9001の要求事項を満たした品質マネジメントシステムを構築する時、下記3つの課題に直面する。
1.ISO9001規格の理解の課題:ISO9001の要求事項の文章や用語は、ソフトウェアに携わる人にはなじみのない言葉が多くそれをどのように解釈すればいいのかが難しい。
2.手順の文書化の課題:標準化するプロセスを特定し、その内容を定めた時、手順書の構成や記述のレベルなど、どのように文書として表現するかが難しい。
3.ソフトウェア開発、管理の標準化の課題:標準化の対象となるプロセス(業務)を特定し、その手順を定め、徹底することが難しい。これはソフトウェア業界における長年の課題でもある。人手に依存することころが多い、連続した多くの工程を同一人物が担当する、業務の状況が目に見えにくい、などがその理由と考えられる。
品質マネジメントシステムを構築・運用するためには、これらの課題に立ち向かい、解決して行かなくてはならない。 タテックス有限会社では、ソフトウェア関連のお客様に対して行ってきたISO9001品質マネジメントシステムの構築、審査登録の支援コンサルティングの経験を踏まえたサービスを提供しています。お気軽にお問合せください。

事業目標を達成するための品質マネジメントシステム

IT関連の機器は、出荷後3ヶ月後には、販売価格が原価を割ってしまうようなきわめて短い製品ライフサイクルの製品がある。そのような企業にとっては、大量に出荷される製品に品質問題が発生すればリコールによる大打撃を受けることになる。そして品質問題と並んで企業生命を左右する問題となるのが、目標とする納期の遵守である。このために「プロジェクトの納期遵守100%」を品質目標に加え、その達成に向けた品質マネジメントシステムの構築と運用を行っているケースがある。  大事なことは、その企業の存続、あるいは成長の鍵を握る課題を品質目標とすることにより、その企業の社長以下、従業員の全てが真剣に取り組む仕組みを作るということである。  大手電機・通信機器製造業などの顧客を持つ組込みソフトウェア業、50人ほどの規模のソフトウェア業において、ISO9001を導入することによりこのコンセプトを効率的に適用できるようになることは大きなメリットとなるし、顧客の品質マネジメントシステムの一部となり得る管理レベルを持つことが新規受注獲得の武器としても機能する。  事業目標を達成するための品質マネジメントシステムを構築し、運用するために、組織内に存在する全てのプロセス(業務)のうち、事業目標に対して、より重要な意味を持つプロセスを明確にし、そのプロセスを重点的に管理、改善することが必要となる。  ISO9001ではプロセスを重点的な管理、改善にプロセスアプローチという考え方を用いている。プロセスアプローチとは、そのようなプロセスを抽出し、システムとして一貫した設計、構築を行い、このプロセスおよびその集合体であるところの品質マネジメントシステムをPLAN、DO、CHECK、 ACTION(PDCA)のサイクルにより、継続的に改善していくことを指している。PDCAのサイクルが効果的な改善となっているのかの把握をするために、それらプロセスについてのデータ、情報を収集し、分析することが必要である。

品質マネジメントシステムの構築と審査登録の意義

品質マネジメントシステムの構築は、登録証書を獲得することを最終目的とするのは、有意義な取組みとはいえない。登録後に、品質マネジメントシステムが継続的に改善され、その効果が結果として現れる事が重要である。   ISO9001品質マネジメントシステムの意義は、プロセスアプローチによる継続的改善にある。ISO9001の要求事項の内容は、改善の基盤として必要な要素を目的指向で示している。特定の管理レベル、あるいは特定の管理方法の実施を要求しているわけではない。 品質マネジメントシステムの審査では、プロセスアプローチによる継続的改善を行う基盤として品質マニュアルが存在し、それが運用されていことが評価される。通常、初期の登録審査ではこのような観点での審査が行われ、その後行われる定期審査において、有効性の審査が行われる。審査登録は、改善のスタートラインに立つことを意味しゴールではない。

わが国のソフトウェア分野においては、開発者の独創性や自主性を尊重するあまり、開発手順の標準化、ならびにその遵守を軽視する組織がある。そのような組織では、ISO9001による品質マネジメントシステムの導入に対して消極的であることが多い。  しかしISO9001は、効率的な開発を行うために必要な開発者の独創性や自主性を制限するものではない。品質マネジメントシステムの構築においては、現状の開発手順を基礎にして、適切な範囲と詳細さで、標準化を実施するべきである。

例えば、多人数、長期での大規模システム開発を中心に行う組織と、プロトタイピング手法とCASEツールの活用により、少人数、短期間での開発を中心に行う組織とでは、おのずと管理方法が異なる。しかし、いずれの組織においても、改善の基盤として品質マネジメントシステムを確立することは、継続的な改善を行う上で不可欠である。

効果的な品質マネジメントシステム構築、システム改善のポイント

効果的な品質マネジメントシステム構築、システム改善のにおいては、以下のポイントがあげられる。
1.企業の事業目標に対して重要な意味を持つプロセスを明らかにし、それらのプロセスを中心としてISO9001の要求事項を満たすよう見直しを行い、品質マネジメントシステムとして一貫性、整合性などを考慮しながら手順を文書化する
2.構築された品質マネジメントシステムを確実に実行する
3.実行した結果を、データや情報に基づいて当該企業にとっての有効性という観点から評価する
4.評価の結果に基づいて、品質マネジメントシステムを継続的に改善する

ISO9001の条項とソフトウェア開発ライフサイクルの対応関係

ソフトウェア開発の主要ライフサイクルをここでは、計画 → 設計 →製造(コーディング、単体テスト)→結合・総合テスト→出荷、導入、運用、展開、保守とする。
ISO9001をソフトウェア開発へ適用するにあたり、主要ライフサイクルとISO9001の各条項との関係をどのように捉えているか、ISO9001の条項のうち、特にソフトウェア開発ライフサイクルと関係が深いと考えられる「7製品実現」の全条項および「8測定、分析及び改善」の一部の条項との対応関係を以下に整理してみた。

(1) 計画
・「7.1製品実現の計画」:製品(あるいはプロジェクト)単位での設計から出荷、導入、運用、展開および保守を含む、ソフトウェア開発活動の全般に対する計画立案。
・「7.3.1設計・開発の計画」:ソフトウェアの設計活動におけるレビューやテストを含む各プロセスに対する計画立案。「7.1製品実現の計画」にも含まれ、関連の要求事項として位置づけることができる。
・「8.1一般(測定、分析及び改善)」:プロセスおよび製品に対する検査(モニタリングおよび測定)活動に対する計画立案。これも「7.1製品実現の計画」に含まれ、関連の要求事項として位置づけることができる。

(2) 設計・開発
ソフトウェアの設計および開発活動の全般に対応するISO9001の条項は「7.3設計・開発」である。これに含まれる各条項は以下のとおりである。
・「7.3.1 設計・開発の計画」:ソフトウェアの開発計画書の作成および変更・更新作業。
・「7.3.2 設計・開発へのインプット」:ソフトウェア設計作業へのインプット情報の文書化。
・「7.3.3 設計・開発からのアウトプット」:ソフトウェア設計作業からのアウトプットの文書化、および満足すべき要件。
・「7.3.4 設計・開発のレビュー」:ソフトウェア設計作業に対する、適切な段階でのレビューの実施。
・「7.3.5 設計・開発の検証」:ソフトウェア成果物に対するレビューおよびテストの実施。
・「7.3.6 設計・開発の妥当性確認」:ソフトウェア成果物が使用できるものか否かを検証する妥当性確認。
・「7.3.7 設計・開発の変更管理」:ソフトウェア成果物の変更管理。

(3) 検査
・設計終了後、ソフトウェア成果物がある程度、固まった状態(変更が頻繁に起きない状態)で実施される検査活動はすべて「8.2.4製品の監視及び測定」に対応づけることができる。
【例1】ソフトウェア成果物に対する最終的な総合テスト。
【例2】出荷に先立って行うソフトウェア成果物の最終的な検査活動。
(一般的には出荷判定などの形式で実施されることも多い)
【例3】顧客へのソフトウェア・インストール後に行う検査活動。
・これらの検査活動を実施するにあたり、何らかの監視・測定機器を使用する場合には、「7.6監視機器及び測定機器の管理」が使用する監視・測定機器に対する管理の要求が示されている。

(4) 出荷、導入、運用、展開、保守
ソフトウェア成果物の開発終了後に実施する、顧客への出荷、導入、運用、展開、および保守などの各活動に対応するISO9001の条項は「7.5製造及びサービス提供」である。
これらの活動の多くは、「7.5.1製造及びサービス提供の管理」に対応している。その他の条項における対応関係は以下のとおりである。
・「7.5.2製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認」:SIサービスや保守サービスなど、アウトプットを直接、監視・測定できないような活動に対する検証活動。
・「7.5.3識別及びトレーサビリティ」:ソフトウェアの設計行為が終了した後の構成管理活動。
・「7.5.4顧客の所有物」:顧客から支給された製品/ツールのうち、顧客が所有権あるいは知的所有権を有しているものの管理。下記(5)を参照のこと。
・「7.5.5製品の保存」:ソフトウェアの設計行為が終了した後、顧客に手渡すまでの製品の管理(あるいは、中間成果物や購買製品の管理)。

(5) ライフサイクル全般に関係するプロセス
以下のISO9001条項は、計画立案から保守までのソフトウェア開発ライフサイクル全般に関係している。
・「7.2顧客関連のプロセス」:顧客ニーズの明確化およびレビュー、ならびに顧客とのコミュニケーションの確立。
・「7.4購買」:ソフトウェア製品の一部を外注先に発注する場合、あるいは市販のパッケージ製品を使用する場合の、購買活動の管理および購買品の検証。
・「7.5.4顧客の所有物」:顧客所有物を使用する場合の管理活動。ライフサイクル中のどの段階で使用する場合でも、本条項が適用される。
・「7.6監視機器及び測定機器の管理」:プロセス(あるいは顧客満足、製品)に対する検査(監視および測定)を行う際に、何らかの機器/装置を使用する場合には本条項を適用する。
・「8.2.3プロセスの監視及び測定」:ライフサイクル中の測定すべきプロセスを定義し、検査(監視および測定)を行う。

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プレス加工業への適用例

精密板金加工は、「精密板金」や「板金加工」とも呼ばれます。これら加工品の主な用途は、産業機器の本体や内部部品、パソコンのケース、オーディオなど、様々な分野で使用されています。

精密板金、板金加工、レーザー加工、溶接、試作、量産、組立、配線など、顧客ごとに異なった要求事項に対応して行く事により多くの精密板金の加工技術やノウハウを蓄積することができます。
また、様々な金型の組み合せ次第で複雑な形状でも加工が可能です。
さらに、関連する表面処理、印刷、彫刻、機械加工、樹脂加工、配線等の品質管理も多くの事例の積み重ねることで、管理レベルのアップが可能となります。

金属板で作る箱(BOX・シャーシ・筐体)

精密板金加工は、鉄板・アルミ板・ステンレス板・銅板などの薄い金属板を使っていろいろな物を作ることができます。
例えば、鉄板(SPCC)を使って作った箱ですが、底面にはバーリングタップやウエルドスタットなどの加工をして表面には三価クロメートメッキ(クロムフリーメッキ)がついています。
ウエルドスタットは、ネジやスペーサーを金属板に溶接する加工です。
ネジやスペーサーが箱に固定されているので、プリント基板や部品などの取付け作業がとても楽になります。

  • ステンレス板のエッジ(切断面)処理

ステンレス(SUS)製シャーシ(箱・ケース)のステンレス板のエッジ(切断面)処理についてです。 ステンレスは表面に光沢もありそのままでも十分綺麗なので表面処理(塗装やメッキ)などをせずに使用されることが多い材料です。 ステンレス板は板の厚さが薄くなればなるほどカミソリに近い状態になることも特徴の一つです。 加工をしたまま切断面に何も処理をしない状態で扱うと人の手や配線などが触れて事故の原因にもなります。 そこで、切断面に出来たバリや鋭角な部分をヤスリなどで仕上げて取り除くのが一般的な方法ですが、板の厚みが薄くなると仕上げをすることによって切断面がさらに鋭くなって危険になる場合もあります。 その様な場合は切断面が表に出ない様に折り曲げて内側に向けてしまう方法と、 切断面にカバーを付けてしまう方法があります。 単純に仕上げただけの切断面とは違い完全に切断面を隠すことが出来ます。

サーバー用のシャーシ(箱・ケース)

ステンレス(SUS)の板金材料を使って作ったサーバー用のシャーシ(箱・ケース)です。ステンレスは腐食しにくい材料です。光沢もありそのままの状態で十分綺麗なので表面処理(塗装やメッキ)などをせずに製品として使用されることが多いです。 ラック内に数多くが収まるサーバー用のシャーシ(箱・ケース)の場合、ステンレス板を材料とする場合は外観や内側にキズが付かない様に注意します。また、特に注意すべき所は材料切断面のエッジの処理(バリ取り)です。 NCT加工機は「せん断」(引き千切る様な切り方)と言う材料を金型で押し切る加工をしています。 打ち抜く表面側はなだらかなカーブが付き切断面の裏側は引きちぎった様なバリが残り刃物に近い状態になります。 レーザー加工機の場合はNCTの様なバリは残りませんが、表も裏も切断面のエッジは鋭くなるのでやはりそのままではケガをする可能性は高いです。人の手が多く触れる様な処にステンレス(SUS)を使う場合は十分なエッジ処理を行う必要があります。

電子機器のプリント基板(PWB、PCB)のレールを板金で加工

電子機器のプリント基板は、電子部品を固定して配線するための主要な部品のひとつで多くはビス止めによって装置内に固定されています。 基板は一度固定したら取り外すことが無いのでこの方法が主流ですが、メンテナンスやオプションなど後から基板を取り外したり追加する必要性がある場合は、ビス止めでは作業性が悪くなります。 そこで、外部から基板の抜き差しが容易になる様にビス止めはせず基板を差し込む溝が付いたレールを使います。 マルチブラケットはレールとして使用せずに基板を固定する為の金具の役目もします。アイディア次第で色々な使い方が出来る金型です。

自動車載用のシャーシ(箱・ケース)

最近の自動車は電子制御が増え、多くの電子制御BOXが搭載されています。自動車用は人命に関わることから厳しい品質管理が求められます。 また振動、温度など過酷な環境で使用されるため耐環境性能や電磁波など誤作動防止などの観点からも要求があります。また、製品重量の軽量化、コスト削減の要求も毎年きびしい要求に対応していかなれればなりません。これらの要求事項に対応するには、製品を作り込む製造技術のみならず、品質を管理するマネジメントシステムが重要になっています。

LED用照明フードの成形加工

LED照明はここ数年で急速に普及してきました。3.11東日本震災以降、地球温暖化防止や省エネ推進の観点からも成長分野です。LEDから発生する熱の問題や光の指向性、耐久性、施工性、保守性など加工に求められる仕様が高度化しています。 例えば、LED用照明フードの成形加工は、暗い場所などで使用する装置などに照明用のフードとして使用されています。 成形部(板金の膨らんだ部分)の内側にLEDや豆球を入れる事によりその下部を照らします。 屋外ではインターホンや電子錠のテンキー上部に屋内ではスタジオ関連の装置や停電時に装置の操作面を照らすなど使われ方は色々です。

プレスブレーキ :金属板を曲げる

精密板金加工で重要な部分とも言えるのが曲げる作業です。

平らな金属板(鉄板・ステンレス板・アルミ板・銅板・など)を曲げて立体に変えていくので角度や曲げる順番など複雑な作業になります。

金属板を曲げる為にはプレスブレーキと言う専用の機械を使います。 曲げる為の金型は上金型と下金型に分かれ上金型は先端がV字に尖った形をしており下金型は上部がV字にくぼんだ形状になっています。

一見曲げるという作業は単純に見えますが、金型の選定や金属板の圧延方向(ロール目)板厚の微妙なバラつきや機械の圧力の掛かり方など経験を含めた技量が必要となる重要な作業です。

複雑な形状をした製品の場合は曲げる回数が多くなり曲げる順序を間違えると曲げられなくなってしまう場合もあるので、その様な場合は作業前に曲げる順番シュミレーションを行います。

ベンダーまたはプレスブレーキ

金属板(鉄板、ステンレス板、アルミ板、銅板など)を曲げる加工機をベンダー又はプレスブレーキと呼ばれています。 昔は金属板の曲げたい位置に直接線を引いてベンダーの金型がその線の上に来る様に手で位置を微調整しながら曲げていました。

目視と手で曲げの位置を微調整するといった精度の悪い加工から解放されたのが、バックゲージ(突き当て)と呼ばれる曲げ位置を決める補助装置の登場でした。

曲げの金型と並行な位置にあって前後に移動します。 バックゲージが出たての頃は手動だったので1曲げごとに作業者が機械の裏に回ってハンドルを回して寸法を決めていました。 現在はプログラムで幾つもの曲げ工程を記憶して自動でバックゲージが移動するので精度と作業性は各段に上がっています。

深い曲げや複雑な曲げ加工

精密板金加工には「曲げ」というプロセスがあります。 金属板(鉄板・アルミ板・ステンレス板)を曲げる専用の機械(ベンダーとかプレスブレーキと呼ばれています)を使います。 曲げる回数が多い製品は、作業が進むにつれて徐々に形状が複雑な立体になっていきます。 曲げる順番を考えずに曲げて行くと金型が外せなくなったり金属板が機械にぶつかってしまうなど曲げられない箇所が発生してしまう場合があります。

特に幅が狭く深い曲げを行なう時は金属板が機械や金型(曲げ型)にぶつかってしまう可能性が高いので、通常とは違う機械のセッティングが必要になります。

金型を留めている中間板に金属板がぶつかってしまうことが想定される場合は、中間板を外して金属板が中間板に当たらない様なセッティングを行います。

箱の四隅に板金の切り口が出ない曲げ加工

精密板金加工で金属板(鉄板・アルミ板・ステンレス板)を使ってケース・箱・筺体・蓋を作る場合、単純に曲げた状態では四隅に板金材料の切り口が見えてしまいます。

四隅を溶接して仕上げない限りスポット溶接・ネジ止め・カシメなどいずれかを用いて固定したとしても、必ずどちらか一方向の切り口は表に出てしまいます。

外観を気にしない場合は別ですが、絶えず人の目に触れる製品などは箱の四隅に板金の切り口が出ない曲げを使う事により外観の見栄えを上がられます。

精密板金加工の切り起こし・曲げ・バーリング加工

精密板金加工で作られた部品は、大抵の場合それぞれ組み立てて一つの製品になります。そこで設計者は短時間で組み立てられる様に工夫をこらしています。 複数の部品を一つにまとめる為に曲げを多用したり、特殊な切り起こしを使ったり、様々な工夫が図面から伝わってきます。 しかし、設計に時間を掛け部品の点数が減り見た目はシンプルになったとしても場合によっては板金加工が複雑になり工程数が増えてしまい逆にコストアップになる場合も考えられます。 我々はできるだけコストが掛らない加工方法について図面を頂いてからご提案をさせて頂くのですが、全体が決まってしまった後では変更できない個所が出てきてしまう場合もあります。 できるだけ設計の早い段階にご相談頂ければ最新の加工方法なども含めてご提案できると思います。

金属板の板厚分だけ曲げる加工「段曲げ」

金属板(鉄板・アルミ板・ステンレス板・銅板・など)の板厚分だけ段差を付ける曲げ加工があります。 階段の様に曲げることから「段曲げ」と呼んでいます。汎用の(標準の)金型を上手く組み合わせて使うことにより専用の金型を作らなくても加工することが可能です。

「切り起こし」という板金の曲げ加工

金属板(アルミ板、ステンレス板、鉄板)のシャーシや蓋に部品の固定や補強目的で金具(L金具など)を取り付けることがあります。 金具を取付けるにはネジ・リベット・溶接などの方法がありますが、いずれの場合にしてもL金具を別部品として作る必要があります。 しかし、条件さえあえばL金具を別部品とせず、シャーシや蓋の中で(同じ材料で)曲げによって作ることができます。 これを「切り起こし」と言っています。L金具の様なシンプルな形状が基本ですが、「切り起こし」が他の加工分や曲げに対して干渉をおこさなければ多少複雑な形状でも曲げによって作ることができます。

専用の曲げ型を作らず円弧に曲げる

金属板(鉄板、ステンレス板、アルミ板、等)を曲げるには正確に位置を決めなければなりません。 一昔前まで曲げる位置は物差しで測り金属板に直接書いていました。 ハンドプレスや蹴飛ばしを使い人の感覚で曲げていた時代です。 現代はバックゲージと言うNC制御(コンピューター制御)の位置出し装置が曲げる位置を正確に決めてくれるので精度はバッチリ出せます。 そこで、その機能を応用することで専用の金型を作らずに金属板を円弧に曲げることが出来ます。 曲げの圧力を調整しバックゲージを細かく動かしながら金属板を送り込むことで好きな大きさの円弧(R曲げ)に曲げることが可能です。 この加工方法は時間と手間が掛るので量産品には向きませんが、試作や少量の製品には適しています。

ヘミング曲げ(あざ折)という金属板の曲げ方について

精密板金加工の製造工程の中に金属板(鉄板、ステンレス板、アルミ板、銅板など)を曲げると言う作業があります。 精密板金加工の場合は直角、鋭角・鈍角・R曲げ(曲線)までいろいろな角度で金属板を曲げます。 その中でもヘミング曲げは鋭角に曲げさらに押し込んで平らに潰してしまう曲げ方です。この曲げ方を使用するメリットとしては折り曲げた部分の板厚が倍になるので補強になります。 金属板の板厚が薄い場合は外周がカミソリの様になります。そのままだと怪我をする場合があるのでヘミング曲げを使い外周の切り口を内側に向けることにより怪我を防止できます。

NC制御付きターレットパンチプレスについて

NCT(NC制御付きターレットパンチプレス)はプレス加工の仲間です。NCT加工はプレス加工ですが金型の使い方に特徴があります。 一般的なプレス加工は製品に合わせた専用の金型を作る必要があります。 NCT加工は基本となる58種類の金型の組合せによって金属板(鉄板、ステンレス板、アルミ板、など)を加工します。 NCT加工機に装着する金型の形状は大きく分類すると●・▲・■の三種類です。 組合せをプログラムすることにより金属板を少しずつ移動して打ち抜く方法で加工が行えます。 基本的には金型の組合せにより加工ができますが全てに対応できる訳ではありません。 特殊な穴や絞りなど金型の組み合わせで対応ができない場合は金型が必要となります。

レトロな雰囲気万点の加工機;ケトバシ

工場内の一角に古めかしい機械が並んでいます。こう見えても立派に現役の加工機です。 これは「ケトバシ」と呼ばれるこの加工機は昔からあるプレス機の一種で動力源は人間の足が蹴飛ばす力です。 工場内を見渡すとコンピューター制御された加工機械がズラリと並ぶ中、鉄色むき出しのその風貌は思いっきりそこだけ時間が止まったかの様にレトロ感が漂っています。 ケトバシは力加減も位置決めも人任せのプレス機なのですが、これが意外と凄いのです。 金属板を加工する会社なら多分一台ぐらいは工場の中にあると思います。 用途にあった金型を装着することによって抜き、曲げ、絞り、刻印などコンピューター制御の加工機では条件が合わず出来ない加工や追加工などケトバシはそれなりにこなせます。見た目は古そうでも大切な設備の一つです。

精密板金加工で使う工具「錐(きり)」について

錐(きり)とは、金属板(鉄板、アルミ板、ステンレス板、銅板、など)に穴やねじを加工する為の工具です。 穴をあけるだけの錐を「ドリル」と呼び、穴の中に雌ネジを加工する錐を「タップの錐」と言っています。 ドリルは「ボール盤」という機械に装着し、タップの錐はタッパーと呼ばれるねじを加工する専用の機械に装着して使います。 一般的なボール盤は一定方向だけの回転ですが、タッパーは加工が始まると錐が右回転で穴の中に入りネジを加工します。ねじの加工が終わると逆回転をして穴の中から出来きます。

鍋ネジと皿ネジの違いについて

ネジには多くの種類があり用途によって使い分けられています。 モノ作りに関係していない人にとって、ネジなどあまり興味がないと思いますが、そんな方々に比較的世の中で一般的に使われている鍋ネジと皿ネジを説明します。 ネジの頭が鍋の様な形をした物が「鍋ネジ」、ネジの頭がお皿の様な形をした物を「皿ネジ」と言います。 身の回りを見渡してみれば、どちらかのネジが使われている物を見つけられるかもしれません。

薄い金属板にネジを加工する

精密板金では、金属板(鉄板・ステンレス板・アルミ板・銅板・他)に雌ネジを加工することを「タップを立てる」とか「ネジを切る」と言っています。 これは雄ネジが回転しながら通る溝を金属板に加工することで、溝と溝の間隔をピッチといい、それぞれネジのサイズ(直径)によってその幅は異なります。 一般的に細いネジの方が狭く、ネジが太くなって行く程溝の幅は広くなっています。 ですから薄い金属板を使う場合は、ネジの直径が太くなればなるほど溝は少ししか作れません。 例えば1mmの金属板に直径3mmのタップを立てると出来上がるネジ山は約1~1個半程度です。 溝の数が少ないとネジを締めつける力に耐えられずネジ山が壊れてしまうことがあります。 この様な場合はバーリング加工と言う筒状の絞り加工をしてからタップを立てることによって、山数を増やし薄い板でも安定したじネジ止めを確実にします。

ウエルドスタット(溶接スタット)自動溶接機

ウエルドスタットとは、金属板(鉄板、ステンレス板、アルミ板など)に専用の溶接機を使ってネジやスペーサーを溶接加工することです。 一般的な溶接と比べ金属板の表面に与えるダメージが少ないことから操作パネル(フロントパネル)など化粧面の裏側や箱の内側に部品やプリント基板を固定する場合に良く使われています。

スタット(ネジ・スペーサー)の供給から加工までを行なう自動機を使用している時、 作業者は加工データーを加工機に直接入力することも出来ますが、入力ミスを防ぐ為、 専任のプログラマーが作った加工データーをサーバーからダウンロードして作業を行う仕組みを採用する場合もあります。

この加工データーはCAD上で確認作業を終わらせているので、作業者は決められた確認作業を行うだけです。 結果的に作業者が現場で図面を見ながら考える時間が無くなり試作や1個単位の注文に対しても自動機で対応できるので品質は安定しています。

ウエルドスタット(ナット・ビス)を使った加工

ナットやビスの圧入加工は板金板(アルミ板、鉄板、ステンレス板など)に穴をあけてナットやビスを差し込んでから加圧します。

その為、板金板の表面に加工痕が残ることから製品の体裁面にはあまり適さない加工です。 それに比べウエルドスタットは専用の自動機を使い溶接で板金板に取付けるので、操作パネルの裏面に直接スペーサーやビスを溶接しても表面は加工の痕跡が残らずフラットで綺麗な仕上がりになります。

精密板金加工と機械加工(切削加工)

一般的に流通している金属材料の形状は、板か、立方体か、棒状の形をしています。 精密板金加工は、薄い金属板(鉄板・アルミ板・ステンレス板・真鍮板・銅板など)を使っていろいろな形の物を作ることが得意です。

金属の塊を削って物を作るのが得意なのは機械加工(切削加工)です。 板金加工と機械加工がお互いの持つメリットを上手に活用して協力しながら物作りをしています。

箱の様な簡単な物を作る場合は、金属の塊を削って作る機械加工より金属板を使って作る精密板金加工の方が比較的早くて費用も安くすみます。しかし、精密板金加工の機械精度では、要求された精度が出せないような場合は機械加工を行います。

機械加工で作った歯車・ギア

金属板(アルミ板・ステンレス板・鉄板など)を使わない加工品や購入品の注文も多く頂くのでいろいろな品物を目にします。

精密板金・小さな物の加工

精密板金加工は金属材料(鉄板・アルミ板・ステンレス板・銅板など)を使ってオーダーメードで大きさや形の異なったいろいろな物を作ります。

金属板・板金材料の表面に文字や記号を印刷する

金属板・板金材料(鉄板・アルミ板・ステンレス板)の表面に文字や絵を印刷する場合はシルクスクリーン印刷をします。

アルミの表面にヘアーライン加工をしてシルクスクリーン印刷で文字を印刷した製品は、たくさん生産されています。

ここで、「ヘアーライン加工」とは、目の細かいサンドペーパーの様な物を使いアルミやステンレスの表面に細いキズを一定方向に付ける加工をいいます。

滲んだり擦れたりしない特殊なインクを使う場合は別として、金属表面にインクを乗せただけではいずれ文字は消えてしまいます。 シルクスクリーン印刷は印刷した物を窯に入れて焼き(熱を加え)インクを定着させるので印刷面を濡らしたり擦っても文字が消えたり滲んだりすることはありません。

塗装後にシルク印刷や彫刻

精密板金加工で作った金属部品の中でも装置の操作部(フロントパネル)や背面の(リアパネル)の多くは塗装後にシルク印刷や彫刻をします。 使われる材料は、鉄板・アルミ板・ステンレス板・銅板・真鍮板などですが、ステンレス板を除いて大抵の場合は塗装などの表面処理を行います。 特に鉄板SPCC(冷間圧延鋼板)は表面処理をしないでそのまま放置するとすぐに錆びてしまうので必ずメッキや塗装を行います。

最近は、環境問題への取組みとして、クロムフリーと言う鉛を含まない環境に優しい材料を使います。

この材料は、鉄板ですが板の表面にメッキ処理がしてあるので加工後に改めてメッキをすること無く素材そのままで使えます。 メッキの工程を省けることから短納期やコストダウンに適した材料です。

精密板金と塗装のマスキング

1.5mmのアルミ板を使い精密板金加工によって箱を作ります。箱には、メラミン樹脂塗装とシルク印刷がしてあります。 本体と蓋の隙間(クリアランス)は約0.1~0.2mm程度です。 箱の表側と内側を塗装すると、本体と蓋が重なりあう部分の塗装が厚くなることがあるので0.1~0.2mmの隙間では、組合せにくくなる場合があります。 そこで予め本体と蓋が接する面に塗装が着かない様にしてから塗装をします。 この様に金属板に対して部分的に塗装を付けないことを「マスキング」をすると言っています。 マスキングはスタットボルトやタップなどに塗装が付着してネジがしめにくくならない様にとか、電気的に絶縁したくないなどを含めネジ部にもマスキングすることができます。

ネジを加工する機械・タッピングマシン(タッパー)について

鉄板・ステンレス板・アルミ板など金属にネジを加工する機械をタッピングマシン(タッパー)と言います。 精密板金のネジ加工は、金属板に加工したいネジのサイズに合わせた下穴をあけてそこにタップと言うドリルの様な専用の工具を回転させながら差し込み材料を削りながらネジを作っていきます。 タッパーは作業者が切削油を付けながら加工をするので、効率を考え自動的に切削油がタップと材料に掛かる仕組みを工夫して全てのタッパーに取付けたりします。 ネジの加工忘れなどが無い様にデジタルカウンターも取り付けて作業者が確認を行いながら作業を進めています。

皿加工の先にバーリング加工をする

皿加工とバーリングタップの加工を組合わせた特殊な加工方法です。 落とし込みバーリングとかバーリング加工後上部皿取りの事など図面上の指示は色いろとありますがいずれにしても皿加工の先にバーリングタップを作ります。 板厚の薄い鉄板・アルミ板・ステンレス板などで作ったカバーやパネルなどを皿ネジで止めたい場合いこの加工が必要になります。 例えばM3の皿ネジを使用したい場合で1mmの板に規程の皿加工を行うと皿ネジの底の部分(ネジが無い部分)が板から飛び出してしまい止める側にぶつかりネジが締められなくなってしまいます。 そこであらかじパネルやカバーから飛び出した皿ネジをかわす為にシャーシ側に皿を加工してその先にバーリングタップを加工することでネジが止まる様になると言う仕組みです。

絞りの中に作るバーリング加工

バーリング加工:CGシュミレーション画像 は穴の周囲を立ち上げ成形加工するものです。 主として小径のものはタップを立てる(ネジを加工する)などに使われます。 通常バーリングはNCT加工機で成形しますが、板金の縁に近い場所や曲げ後にしかバーリング加工が出来ないなどNCTが使えない場合はケトバシを使います。 しかしケトバシはふところ(加工出来る範囲)が狭いので加工出来る板の大きさに加えて、曲げた後の場合ではさらに高さにも制限ができてしまうので使える範囲が限られてしまいます。 このようにNCT加工機もケトバシも使えない場所にバーリング加工をしなければならない場合。比較的ふところが深く高さもあるインサートマシン(ヘガー)を使ってバーリング加工を行います。

金属板に部品を固定するポップリベット

精密板金加工は、金属板(アルミ板・ステンレス板・鉄板など)を切断・折り曲げ・溶接などを行い、いろいろな形の物を作ります。 しかし、折り紙とは違い一枚の金属板を曲げて加工できる形状は限られています。 そこで、作りたい物(完成形)を出来るだけ可能な最小単位に分割して後で組み立てます。 組み立てる時に部品同士を固定する方法として、溶接、ビス止め、カシメなどがありますが、ポップリベットを使った部品の固定方法もあります。 メッキ処理や塗装処理をする板金部品に対して、処理前にそれぞれの部品や購入品を取り付けてしまうと、部品が溶けてしまったり処理が付かない部分が出来たりなど問題が生じる場合があります。 この様な場合は、処理後に部品を取り付けることになりますが、専門的な技術を必要とせず比較的簡単な作業で取り付けが行えるのがこのポップリベットです。

板金材料の縁に近い圧入加工について

精密板金加工は、薄い金属材料(鉄板・アルミ板・ステンレス板)を曲げたり溶接するなどしていろいろな形の物を作ります。 出来上がった板金製品にはネジを使って電子部品や電子基板などを組み込みます。 多くのネジを一本一本指で押さえて組立るのは大変な作業です。 組立作業を容易にする為に始めから板金製品にネジを取り付ける加工があります。 これは板金材料に下穴をあけてその穴に専用のネジを打ち込み固定する圧入加工(カシメ加工)の一つでスタットネジ(カシメネジ)などと言っています。 板金製品に直接ネジが付いている状態で配線や組立作業が出来るのでとても便利な加工方法ですが金属板にネジを押し込むという特性上押し込んだ時の圧に耐えるだけの余肉(材料)がネジの周りに残っていなければなりません。

切り口からギリギリの位置にスタットネジの加工指示がある場合、スタットメーカー推奨の圧を掛けると周辺が大きく変形してしまうのであえて余肉を付けて加工後に切断をするという方法をとります。あくまでもお客様の了解を得た上での加工です。 極端に板の縁に近い場所にスタットネジを付ければネジを押さえている周りの板金材料が少ないので取れやすいことは確かです。できればこのような設計は避け頂けられた方が良いと思います。

4.2 文書化に関する要求事項

精密板金で使われている図面(設計図)の管理について

物を作る為には、作る人に対してその詳細な情報を伝えなければなりません。図面は設計者の意思を作り手に伝える手段です。 その役目を果たすのが図面(設計図)です。

図面は、紙の縁近くに図面枠という四角い枠を描き、その囲われた線の中に作りたい物の形状と大きさを描きます。 一般的な図面の識別情報として図面番号・品番・品名・工番などが書かれています。 そのほかに表面処理や材質などの情報も書かれています。

そこで図面は誰が見ても(何処の会社で作っても)同じ物が作れるように第三角法という投影法によって描かれています。 物体を正面、側面、上面、の3方向から見た図を描きます。 一般的には一番重要な面を正面として描きその真上に上から見た形、その真横に横から見た形を描く様にします。 そして精密板金加工は、この図面に書かれた絵を立体の構造物に作り上げて行くわけです。 物づくりにおいて、図面の管理も大事な仕事のひとつです。

7.3 設計・開発  精密板金加工で使うCAD/CAM

精密板金加工で使うCAD/CAMは、設計や製図で使うCADとは違います。 製図された図面から、加工に必要な展開図をつくるためににCADを使います。 精密板金業界にCADが導入される以前はもちろん展開図は手書きが当たり前、確認作業を含めて相当時間が掛かっていました。 CAD/CAMとはCADで作成した展開図をCAMで加工機用のプログラムにして加工機に転送します。 CAD/CAMオペレーターは、パソコンの操作技術よりも自社の保有金型や加工技術を熟知して最適な加工を目指したプログラム作りが要求されます。

7.5.5 製品の保存;材料は安全と品質を考えて保管

梅雨に入り局地的な集中豪雨による被害が報道されています。台風や地震も含め自然災害に対する備えは大切です。 予知が難しいとされる地震に対して大切な従業員と周辺地域の安全が確保できるよう常に準備と訓練が必要です。

地震発生で怖いのは物の転倒や落下による下敷きです。 工場の中には金型や材料である金属板(鉄板・アルミ板・ステンレス板・銅板)など重量物が沢山あります。 転倒してきたら人が支えることは出来ません。 金属板の標準的なサイズは3×6(さぶろく)1,829×914mmで、その重さは板厚が0,8mmの鉄板なら一枚約10Kg位になります。 まとまれば相当な重さになります。精密板金工場内でよく見かける金属板の保管方法は、壁に立掛たり木枠を利用 して水平に積み重ねるなどの方法です。 特に怖いと思うのは水平に積み上げた材料です。 崩れ出したら一枚10Kgもある数ミリの金属板が何枚も勢い良く飛び出してくるので想像するだけでも恐ろしいです。 その中でも金属板の保管は、荷崩れやキズ・変形防止の為に自動倉庫を使っています。

7.6監視測定機器の管理;精密板金加工で使う計測器について

精密板金加工で使う計測器には、「ノギス」「鋼尺」「ハイトゲージ」「三次元測定器」などがあります。

ノギスは、細長い形をしていて、これ一本で長さ・厚み・穴の大きさ・奥行きなどを測ることができます。 先端に付いている口ばし状の部分をスライドさせて測ります。製品は多数の工程を経て作られるので一つ一つをしっかり計測して行かないと小さな誤差の積み重ねが製品の品質を大きく下げる結果に繋がります。もし計測器の精度が狂っていたら大変なことになります。 社内にある全てのノギスを定期的に校正しノギスの精度を維持し取扱や保管に関しても従業員に徹底しています。

製品の品質を保証するために用いるノギスは、何年も校正しないままの使っているとしたら、いずれ信用を失うことになるかもしれません。 そのために定期的な校正による計測器の管理が必要です。ISO9001では、7.6監視測定機器の管理で要求されています。

8.3 不適合製品の管理の例;NCT加工機の材料裏キズ対策について

作業中に板金材料(鉄板・アルミ板・ステンレス板・銅板)の表面にキズを付けない様に注意を払います。 板金材料の表面は、完成品の化粧面や外観となる部分が多く出来るだけ加工の際に余計なキズを付けたくないからです。 特に材料の生地そのままの風合いを生かして使われるメッキ処理などの場合は、一切キズを付けることが出来ないので保護シートを表面に貼った状態で最後まで加工を行います。 表面ばかりに意識がいってしまうとついつい疎かになりがちなのが、裏面の取り扱いです。 裏面にキズが付けば品質も含め製品全体の価値が下がってしまいます。 材料を引きずりながら取り出したり、半製品同士を重ねたまま移動したり、加工中を含めいろいろな場面で裏キズが着く可能性はあります。 中でもNCT加工機は絶えず加工機内で材料を引きずり回すので材料の裏面にキズがついてしまう確率が非常に高いです。 そこで対策として加工テーブルにブラシを使い裏キズの防止をしています。 ISO9001では、客先や市場で発生する不具合、クレームの管理はもちろんのこと、製造工程で発生する、こうした傷・打こん、寸法違い、材料違い、美装違いなどの不適合についても管理します。

金属板・切断面のバリ処理

精密板金加工は、金型やレーザーを使って金属板(鉄板・アルミ板・ステンレス板・銅板など)から必要な形を切り取ります。 その時、金属板の切り口には「バリ」といわれる指で触ると多少引っかかる様な出っ張りが発生します。 バリの処理は工程が進み形状が複雑になってから行うと作業性が悪いので、金属板が平らな状態で行います。 一般的に行われているバリの処理は、ヤスリ・エンドレス・バリ取り機といったバリを削り取る工具や機械を使います。 これ以外の方法として、NCTの金型を使ってバリを潰すという処理も行なわれたりします。

ステンレス板のエッジ(切断面)処理

ステンレス(SUS)製シャーシ(箱・ケース)のステンレス板のエッジ(切断面)処理についてです。 ステンレスは表面に光沢もありそのままでも十分綺麗なので表面処理(塗装やメッキ)などをせずに使用されることが多い材料です。 ステンレス板は板の厚さが薄くなればなるほどカミソリに近い状態になることも特徴の一つです。 加工をしたまま切断面に何も処理をしない状態で扱うと人の手や配線などが触れて事故の原因にもなります。 そこで、切断面に出来たバリや鋭角な部分をヤスリなどで仕上げて取り除くのが一般的な方法ですが、板の厚みが薄くなると仕上げをすることによって切断面がさらに鋭くなって危険になる場合もあります。 その様な場合は切断面が表に出ない様に折り曲げて内側に向けてしまう方法と、 切断面にカバーを付けてしまう方法があります。 単純に仕上げただけの切断面とは違い完全に切断面を隠すことが出来ます。

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精密板金業への適用例

”板金加工”と言う言葉を使うと車の修理をイメージされる事がよくありますが、横文字にするとsheet metalとなり、平板の金属に加工を施して製品の形にしていく板金加工です。 板金加工の作業手順例は、以下のような流れになります。

  1. 図面展開
  2. 抜き加工
  3. 前加工(バリ取り、タップ加工等)
  4. 曲げ加工
  5. 溶接
  6. 仕上げ
  7. (表面処理)
  8. (組立)

板金加工とは金属の板を切ったり、曲げたり、くっつけたり、穴をあけたりとしながら形にしていく加工の事を言います。 折り紙を金属でしているようなものなんです。 一方”プレス加工”という加工法もあります。プレス加工は金型を使って金属を造形するもので少し違います。板金とプレスの両方を手がけている会社も数多くあります。 一言ではなかなか説明できない精密板金屋さんの内容を、解りやすいように板金で作る手順を例に流れを追って説明していきます。

1 図面展開

板金加工用の図面は第3角法により書かれていますので、図面に形状・寸法・仕様などが書かれています。 この図面を元に板金でどのように実現するかをイメージします。 この展開作業が大変です。

  • 金属板(鉄板・ステンレス板・アルミ板・銅板・他)は曲げると伸びます。

皆さんも紙を使って箱を作った経験があると思います。必要な箱の大きさの展開図を紙に書いてハサミで切り取って作ります。金属板を使って箱を作る場合は紙の様に手で曲げることはできません。曲げる際に金型を金属板に押し当てて曲げるので、曲げた部分がある一定量で伸びるという現象がおこります。金属板(鉄・アルミ・ステンレス・銅・他)の伸びる量は材質・板厚・曲げる角度によって異なります。したがって金属板を使って箱を作る場合は、予め伸びる分をマイナスして展開図をつくらないと実際より大きな箱が出来あがってしまいます。

展開ミスを起すと、曲げ加工手順で問題が発生してしまいます。必要に応じて修正を加え実現可能な展開にします。

2 抜き加工

金属板を展開図のように加工するにはNC機を用いて用いて行います。 NC機を動かすためには展開図形を抜くための個別プログラムを作成する必要があります。

NC機用のプログラムによりNC機が動かされます。
ここでNC加工(numerical control machining)とは、数値制御(NC)による機械の加工方法です。 ドリルなどに代表される切削用工具の刃先の動作を座標値によって定義し、その情報をもとに工作機械に内蔵されたサーボモータが動くことによって工具や被加工物が動作し、加工が行われます。

初めての図面を製作する場合には、材料代+加工費とは別に初期費用としてこのプログラム設計代がかかります。

3 前加工(バリ取り、タップ加工等)

抜き終わった金属板にはバリがありますので、この時点で後工程と怪我防止の為にバリを取り除きます。 また、タップ等の加工もこの時点で処理します。

  • 金属板・切断面のバリ処理とは

精密板金加工は、金型やレーザーを使って金属板(鉄板・アルミ板・ステンレス板・銅板など)から必要な形を切り取ります。 その時、金属板の切り口には「バリ」といわれる指で触ると多少引っかかる様な出っ張りが発生します。 バリの処理は工程が進み形状が複雑になってから行うと作業性が悪いので、金属板が平らな状態で行います。 一般的に行われているバリの処理は、ヤスリ・エンドレス・バリ取り機といったバリを削り取る工具や機械を使います。 これ以外の方法として、NCTの金型を使ってバリを潰すという処理もあります。

  • タップ加工とは

ステンレス板・鉄板・アルミ板など金属にネジを加工することをタップ加工と言います。 精密板金のネジ加工は、金属板に加工したいネジのサイズに合わせた下穴をあけてそこにタップと言うドリルの様な専用の工具を回転させながら差し込み材料を削りながらネジを作っていきます。 タッパーは作業者が切削油を付けながら加工をするので、効率を考え自動的に切削油がタップと材料に掛かる仕組みを工夫して全てのタッパーに取付けたりします。 ネジの加工忘れなどが無い様にデジタルカウンターも取り付けて作業者が確認を行いながら作業を進めます。

4 曲げ加工

精密板金加工の製造工程の中に、金属板(ステンレス板、鉄板、アルミ板、銅板など)の曲げ加工があります。 精密板金加工の場合は、直角、鋭角・鈍角・R曲げ(曲線)までいろいろな角度で金属板を曲げます。 金属板を曲げる加工機を、ベンダー又は、プレスブレーキと呼びます。

抜き加工が終わった物に曲げ加工を施し製品の形に近づけます。 図面展開方法で触れましたが、曲げ機械の特性上どうしても曲がらない形が出てきます。 曲げる段階で気がついたのでは遅いので、展開図を作る時に曲げ、組立溶接の事を考えておく必要があります。 最後の曲げができなかったなど、板金の展開図の良し悪しが大事になります。

5 溶接

溶接とは金属同士を溶かして接合するものです。 複数の金属板(ステンレス板、鉄板、アルミ板など)部品同士を溶接することもあれば、専用の溶接機を使ってネジやスペーサーを溶接加工することもあります。

組立時に部品同士を固定する方法として、溶接、ビス止め、カシメ、ポップリベットを使った部品の固定方法もあります。

他にもスポット溶接というものがあります。スポット溶接はブラケット等の別部品を取り付ける時に用います。 溶接箇所が多く、熱により一気に作業する事が出来ないこともあります。

6 仕上げ

溶接により接合部に盛り上がりができますので、これを平らに仕上げます。 また製作途中で表面に傷がついた物もこの時点で仕上げます。 溶接箇所が多い為、その分仕上にも時間がかかってしまいます。

7 表面処理

質感を出すためにアルミにバフ研磨をする事も可能です。バフ処理後に色付きアルマイトも可能です。

板金加工の業務フロー概要がご理解頂けたことと思います。

板金加工に於いて注意しなければならないのは、素材の金属(鉄、アルミ、ステンレス、銅、真鍮、化粧板)は加工時に力や熱を加える事により素材が微妙な伸び縮みをおこす事です。 この金属の変化を計算し事前に金属板を抜き加工したり、力と熱を加減しながら図面を実現させるためには経験値が必要となってきます。 この様な経験値を豊富に持っていなければプロとしてやっていけません。図面に書かれた品物を精度よく完成させる事が品質管理になります。

ISO9001で製造工程を管理する

では、この精密板金業では、ISO9001を使って、どのように品質管理をするのでしょうか。

品質マネジメントシステムは、大別すると、4. 品質マネジメントシステム 、5. 経営者の責任 、6. 資源の運用管理、7. 製品実現、8. 測定、分析及び改善 になります。

さらに細かくしてみると、以下のようになります。

  • 4. 品質マネジメントシステム
    • 4.1 一般要求事項
    • 4.2 文書化に関する要求事項 (品質マニュアル、文書管理、記録の管理)
  • 5. 経営者の責任
    • 5.1 経営者のコミットメント
    • 5.2 顧客重視
    • 5.3 品質方針
    • 5.4 計画 (品質目標、品質マネジメントシステムの計画 )
    • 5.5 責任、権限及びコミュニケーション(責任及び権限、管理責任者、内部コミュニケーション)
    • 5.6 マネジメントレビュー(一般、マネジメントレビューへのインプット、マネジメントレビューからのアウトプット)
  • 6. 資源の運用管理
    • 6.1 資源の提供
    • 6.2 人的資源(一般、力量、認識及び教育・訓練)
    • 6.3 インフラストラクチャー
    • 6.4 作業環境
  • 7. 製品実現
    • 7.1 製品実現計画
    • 7.2 顧客関連のプロセス(製品に関連する要求事項の明確化、製品に関連する要求事項のレビュー、顧客とのコミュニケーション )
    • 7.3 設計・開発(設計・開発の計画、設計・開発へのインプット、設計・開発からのアウトプット、設計・開発のレビュー、設計・開発の検証、設計・開発の妥当性確認、設計・開発の変更管理 )
    • 7.4 購買(購買プロセス、購買情報、購買製品の検証 )
    • 7.5 製造及びサービス提供(製造及びサービス提供の管理、製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認、識別及びトレーサビリティ、顧客の所有物、製品の保存)
    • 7.6 監視機器及び測定機器の管理
  • 8. 測定、分析及び改善
    • 8.1 一般
    • 8.2 監視及び測定(顧客満足、内部監査、プロセスの監視及び測定、製品の監視及び測定)
    • 8.3 不適合製品の管理
    • 8.4 データの分析
    • 8.5 改善 (継続的改善、是正処置、予防処置 )

冒頭に挙げた業務フローは加工する作業部分の詳細に過ぎません。製造するにはその前後にも多くのプロセスがあります。 これらも管理しないと、よい製品を安定的に製造することができません。 まず、顧客から依頼があって製造する受注生産の場合と、自社で設計開発して製造する見込み生産の場合など、細かくはケースによっていろいろなフローが存在します。どちらの場合であっても顧客を見つけて売る必要がありますから営業活動が必要です。 それが 7.2 顧客関連のプロセスです。 顧客関連のプロセスは、仕様を明確にすること、御見積書などで条件と詰めること、受注可能な案件なのか、製造可能なのかレビューすること、顧客とのコミュニケーションをとるなど、管理すべき点がいくつかあります。 ずさんな営業活動は、赤字受注やクレーム対応のまずさから顧客不満足につながったり、信用失墜になるなどの結果を招きます。品質管理活動の大事なプロセスの一部なのです。

受注したら、図面や仕様書から、どのように製品を製造したらよいか、品質計画をつくります。これが7.1 製品実現計画です。 次に、具体的な設計開発が必要な場合、7.3 設計・開発のプロセスを管理する必要があります。

設計開発のプロセスを終え、製造に先立ち、在庫引き当てや材料手配が必要になります。それが7.4 購買です。 業者を選定し、発注し、受入れ検査を終えたら、いよいよ製造です。これが7.5 製造及びサービス提供です。 製造には、製品のできばえをチェックするために、ノギス、マイクロメータ、ハイトゲージ、鋼尺、温度計などの計測器などが必要になります。7.6 監視機器及び測定機器の管理で管理します。

物造りの基幹プロセスは、7. 製品実現で実現してくのですが、それを支えるプロセスの6. 資源の運用管理8. 測定、分析及び改善も管理する必要があります。

ニーズで選べる支援内容

当社のISOコンサルタントは、工作機械メーカーAM社が提供する品質マネジメントシステム構築・改善支援に長年携わっておりました。 板金、プレス、塗装、メッキ、樹脂成形、機械加工、鋳造など中小製造業に精通しております。

ISO取得に必要な工数をお客様のニーズで選べます。お問合せください。 新規認証取得とともに、既にシステム運用をしていて、もっと役立つISOに改善したいのだが。。。 といった改善のご相談に積極的に対応させていただいております。お気軽に。お問合せください。

これまでにも、別のコンサルタントが構築したシステムの見直し、改善を多く手がけてきた実績があります。

せっかく認証取得しているのですから、経営に役立つ仕組みにするため、一緒に汗をかこうではありませんか。 プロに徹しております。必ずや、ご満足いただける結果を残します。 お気軽にお問合せください。
現在、ISO9001:2008年版対応の品質マニュアルへの書き換えサービスを実施しております。サービス内容はお客様との相談により対応しております。お気軽に。お問合せください。

ISO9001 当社コンサルティングの特徴

ISO9001のシステム構築といってもオリジナル化の方法は多様です。当社の指導ポリシーは下記のとおりです。

  • 認証取得マークだけでよいというお客様には適合性審査に通ることを重点にしたシステムをご提供致します。
  • 経営に役立てようとするお客様にはISO以外のオプション機能を組み込むことができます。
  • 企業を取り巻く経営環境の分析、経営戦略の立案、品質目標の設定・運営管理を実のあるものにできます。
  • BSC(バランススコアカード)日本経営品質賞、ランチェスター戦略、ISO9004など他の経営のしくみとISO9001とを融合するご提案ができます。
  • 経営幹部や管理職の人材育成、プロセス改善、顧客満足のしくみを深掘りすることができます。
  • 不良が減らない、原価低減がしたい、顧客満足を高めたい、製品(サービス)設計開発の能力を高める策を提供できます。

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戦略・方針よりも方法・戦術が先になっていませんか

中小企業の多くは、受注型企業です。大量生産・大量受注時代の経営は、生産・サービス提供システムの方法論を中心に進めていけばそれでよかったのです。消費者の顔をそれほど気にしなくとも親企業の顔さえ見ていればなんとかなったのです。
国際化、モノ離れ、規制緩和(撤廃)の進展で、自由競争、自己責任、多様化・多品化・少量化のキーワードが当たり前の時代になりました。系列化の見直しは、親離れを余儀なくされています。自社の特殊かつ得意な技術・サービスや製品で親企業と対等の競争も強いられます。今までは見なくても何とかなった最終消費者の顔をまともに見ることが必要になってくるのです。
この場面になりますと、自社の方針を明確に提示して訴えなければならなくなります。自社の”意味付け””位置付け””方向付け”が必要になってきます。
ISOには品質に関する戦略、方針管理の仕組みづくりのヒントがあります。それをベースに目標管理システムをはじめ広く社内外に関する管理システムの取組みに応用展開できるので使わないのは損です。

社長はなぜ権限委譲ができないのか

創業者社長は、事業開始以来すぺて自分で会社を切り回してきたという自負心を捨て切れません。自分が憲法であり、自分が会社の法律(規則)を決めてきたという歴史があります。会社がある程度の規模になり、自分1人では社員全員に目が届かなくなり、やがて一部の業務の決定権は部下に委譲しなければならなくなるときが来ます。しかし、何をどのように委譲すればいいのか分からないということがあり得ます。得てして場当たり的なそのときの気分、都合、思惑で指示とも委譲ともつかない口頭であることが多いのではないでしょうか。

幹部や管理職は、初めのうちは戸惑いながらも何とか”委譲”に対応しようと努力します。しかし、委譲の内容がうまく伝わっていなかったりします。社長の考えていた結果にはならないと、社長は怒鳴り、そして委譲したはずの幹部を無視して直接現場に指示したり、直接外部との交渉をしてしまうといったことになったりします。
こうしたことが繰り返されると社員は、社長の言動を実体のない”異常時の委譲”と悟り、”指示待ち委譲”に徹する結果になります。そして幹部も同様に委譲のノウハウが身につかず、部下に対して社長と同じような行動をとってしまうのです。家族的経営とか協調的経営と言いながらも結果は、すべての階層で人を信用していないことになります。
社長が憲法であり、社長が法律を作っていると、部下は指示待ち人間になり、社長の決めた法律に適合しそうな行動や報告しかしないようになってしまいます。 自分の土俵ばかりで社員に接し勝負していたのでは部下は育たず、いずれ逃げていくはめになります。 社長と社員は、信頼できるパートナーで自分の強み(得意)と弱み(苦手)をはっきりと見極め、自分と社員が共有する関係が望ましいことは言うまでもありません。

クレーム処理、苦情処理はまたとない顧客とのコミュニケーションの機会である

苦情が発生するのは確かに好ましい事態ではありません。しかし、その機会を利用して顧客に深い印象を与え、長期安定的なリレーションの構築に結び付けている事例も多くあります。苦情処理の迅速さ・巧拙が、取引維持・拡大か顧客喪失かの分かれ目となり得るのはまぎれもない事実です。
苦情を受け付けて適切に対応し、その機会を利用して逆に顧客とのリレーションを深めるためには、経営者が自ら進んで顧客の声を聞き、場合により陣頭指揮で迅速な解決に当たるなど、積極的に動くことが望ましいことは言うまでもありません。
企業の製品・サービスに対して不満を持っている顧客の数は、経営者が思っているより、はるかに多いと考えてよいでしょう。一説には、不満を持つ顧客のうち苦情を言うのは4%で、あとの96%は、ただ怒って二度と来ないだけであると言われています。 表面に現われる苦情よりも、潜在的な苦情の方がはるかに多いのが現実なのです。
本来、顧客はわざわざ労力をかけて苦情を申し立てるほど、その企業のことを思ってくれてはいないということです。苦情を言ってくれる顧客は貴重な存在です。企業にとって苦情の情報は、お金を払ってでも入手したい大事な情報であるはずです。
顧客に苦情を簡単に申し立てることのできる機会を提供すれば、一気に苦情の洪水が流れ込んでくるかもしれません。その上で、苦情を誠実に取り上げ解決するという姿勢を見せて、継続して実績を挙げれば、顧客はその企業を評価しロイヤルティを高めることも可能なわけです。
優れた企業はこのことに気がついて、日常業務の中で顧客が苦情を言いやすい環境を準備しています。たとえば、簡単なアンケート調査票や「お客様ご要望メモ」のような用紙の配布と回収、フリーダイヤルの苦情処理センターの設置などです。また企業側のアクションによって定期的に実施されるCS調査も、顧客に苦情申し立ての機会を提供する良い手段として、重要な位置を占めています。

顧客満足度把握の方法と顧客満足度データの活用

顧客満足度を把握する方法と顧客満足度データの活用は、経営システムを改善していくうえで非常に重要です。顧客満足(CS)経営は、何よりも事実を把握することを出発点とする経営なのであり、継続して把握し分析される客観的なCSデータが大きな意味を持っています。また、企業が顧客の声を聞く姿勢を行動で示すこと事態が、顧客志向の経営を実践していることを対外的に示す良い機会になります。

・顧客満足度の把握は、定期的に、できるだけ客観的なデータが得られるよう工夫して実施されなければなりません。客観的なCSデータを把握し分析することは、CS経営の実践において絶対に必要なことです。
・収集するデータの内容についても、本当に意味のある顧客二ーズの切りロや良いアイディアを提供するものなのかどうか、常に検証した方がよいでしょう。
・データの量に関しては、多くのものが収集できればその方がベターです。あまりにも少ないサンプル数に基づいて分析を行い、改善の基礎データとするのは、統計学的にも危険があります。
・顧客満足度を把握する調査方法は、通常のマーケティング等の調査方法と同様であり、色々な種類があり得ます。 基本的には簡単な方法で十分であり、必ずしも大規模な情報システム装備を必要としません。 具体的には、調査票への回答記入を顧客に依頼する方法(調査票の配布・回収について、調査員の直接訪問による方法、留置法、郵送法などがある)、電話インタビューを行い調査員が聞き取った回答内容を調査票に記録する方法、フォーカス・グループ・インタビューによる自由な討議を記録する方法、随時得られた CS情報をデータベースに集積する方法などが利用されます。CSの最大化を目指す以上、何よりも顧客満足度の把握方法が優れていなければなりません。
・CSデータは、適切な方法を用いて客観的に把握され、かつ組織全体を通じて活用されることで、CS経営の実践に貢献します。データを収集しただけでは意味がありません。分析して、活用してこそ意味があるのです。

戦略・方針よりも方法・戦術が先になっていませんか

中小企業の多くは、受注型企業です。大量生産・大量受注時代の経営は、生産・サービス提供システムの方法論を中心に進めていけばそれでよかったのです。消費者の顔をそれほど気にしなくとも親企業の顔さえ見ていればなんとかなったのです。
国際化、モノ離れ、規制緩和(撤廃)の進展で、自由競争、自己責任、多様化・多品化・少量化のキーワードが当たり前の時代になりました。系列化の見直しは、親離れを余儀なくされています。自社の特殊かつ得意な技術・サービスや製品で親企業と対等の競争も強いられます。今までは見なくても何とかなった最終消費者の顔をまともに見ることが必要になってくるのです。
この場面になりますと、自社の方針を明確に提示して訴えなければならなくなります。自社の”意味付け””位置付け””方向付け”が必要になってきます。
ISOには品質に関する戦略、方針管理の仕組みづくりのヒントがあります。それをベースに目標管理システムをはじめ広く社内外に関する管理システムの取組みに応用展開できるので使わないのは損です。